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2016年10月 7日 (金)

甘い話

ハリウッド!!セレブリティ!!!
日本にいるとそんな「アメリカに住む綺麗な人達」の情報ばかり入ってきます。
が、実際アメリカに住んでみて辺りを見回してみるとそんなことはなくて。
アメリカで一番深刻な健康問題の一つとして長年懸念されているのが「肥満」です。
20歳以上大人の場合、健康体は30%ほど、残りの70%は太りすぎ、肥満や”超肥満体”に当たるといいます。
(https://www.niddk.nih.gov/health-information/health-statistics/Pages/overweight-obesity-statistics.aspx )


そして肥満が蔓延すればダイエットも流行します。

 "セレブも実戦している○○ダイエット!"のような触れ込みで、
毎月フィットネス雑誌には違うダイエットが特集されます。
多くの場合、ダイエットをするというと皆カロリーを気にし、
”食べたカロリーと消費したカロリーのバランス”が全てであると信じられてきましたが、

食べた分だけ燃やす、というのがセオリーであるとするのならば、


”六ヶ月の子供の肥満が蔓延しているというのは一体どうやって説明するのか?”



今月紹介するのは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の教授 Dr. Robert Lustigによる糖質の怖さについてのビデオ。
Dr. Lustigは日常生活で口にしている糖質がいかに有毒で、危険で、企業や政府がそれをどうやってひた隠しにして売っているかを物凄くわかりやすく説明しています。

(このブログでは内容をだいぶ端折って紹介しています。英語の出来る方はどうぞ講義の動画を見て下さい。1時間半ぐらいです。)

Sugar: The Bitter Truth
YouTube: Sugar: The Bitter Truth



糖の種類
①グルコース/ Glucose
身体のエネルギーになる糖です。
人間や動物、植物が活動するために必要不可欠です。
そしてこのグルコースと、次に紹介する②、③、④の糖類はまったく違うものなのを覚えておいてください。


②サッカロース / Sucrose

サッカロースは所謂普通のテーブルシュガー。ショ糖です。
成分の50%はフルクトースと呼ばれる糖で出来ています。

③高フルクトース コーンシロップ(High Fructose Corn Syrup)
高フルクトース コーンシロップは普通のテーブルシュガー(sucrose)より甘く、
普通のテーブルシュガーより安いことを理由に、アメリカでは1970年代後半から積極的に使われ始めました。
こちらも、成分の42-55%はフルクトースと呼ばれる糖で出来ています。
高フルクトース コーンシロップの一番の大罪はどんな加工食品にでも紛れ込めることだと教授は言います。
パンからケチャップ、マスタード、クッキーなど、本当に何にでも添加されていて、
私達は日々知らず知らずのうちに摂取しています。
我が家で加工食品を購入する時、一番気にするのもこの添加物で、
スーパーマーケットに行くと意外な加工食品にも含まれていてびっくりすることも珍しくないのです・・・。


④フルクトース/Fructose

所謂”果糖”です。
フルーツに含まれているから何となく健康に良さそうな糖、というイメージが漠然とありますがそれは間違いです。
教授が一番危険視するのもこのフルクトース。
詳細はこの後で説明します。

Relativesweetness_2

















(←糖度のグラフ。普通のテーブルシュガー(sucrose)に比べて、フルクトース(fructose)がいかに甘いのか、すぐにわかる。)



政治的背景
アメリカがなぜこんなに肥満大国、砂糖中毒になってしまったかには政治的背景があります。

①ニクソン大統領が(大統領選で食糧問題を取り上げられないために)食糧を出来る安くすることに専念した

②高フルクトース コーンシロップの登場
実はこのシロップ、60年代の日本で発明されました。
その後1975年にアメリカも取り入れはじめました。

③コレステロールに対する間違った認識によって推奨されはじめた”low-fat(低脂質)”食
低脂質とは裏を返せば high carb(高炭水化物)の食事です。
しかし低脂質の食事というのはとても味気ないもの・・・・・
そこで”おいしさ”を糖分で補うことにしたわけです。
また糖はステーキやクッキーの”焼き色”をつけるのにも一役買っています。
"Browning reaction" と呼ばれるこの反応と同じことがあなたの動脈にも起こっているのですよと教授は言います。現代の加工食品にはその他にも保存期間を長く/ 調理時間を短くする目的で食物繊維の除去などが施されています。
つまり栄養価が低く大して美味しくもないものを糖の添加でごまかすことによって「安くて、早くて、保存も利いて”美味しい”加工食品」を作ることに成功したのです。



フルクトースの大罪
フルーツや野菜からの自然な消費ならば15gm/日であるフルクトースの消費が、
今や72.8gm/日、一日の必要カロリーの15%がフルクトースで摂取されているという報告があります。これは大きな問題です。

なぜならば
a. フルクトースはグルコースの7倍、Browning reactionを発生させる

b. フルクトースは食欲増進ホルモン(グレリン)を抑制しない
グレリンは食欲増進のホルモンです。
食事の前にソーダを飲むと食べ過ぎてしまうのは、ソーダに含まれるフルクトースにはグレリンを抑制する働きがないからです。
ソーダそのものでどれだけカロリーを摂取していても、満腹を感じることがないのです。

c. フルクトースはインスリンの放出を促さない
→インスリンが出ないとレプチン(満腹感を教えるホルモン)も出ない
→レプチンが出ないと脳はまだ飢餓状態だと思う
→結果、食べ過ぎてしまう

フルクトースを大量に、長期的に摂取し続けることはメタボリックシンドロームを発症することにも繋がります。
詳しくは後述にて。

フルクトースの大罪その2
グルコースとフルクトースの大きな違いはその代謝のされ方にあります。

身体に必要不可欠なグルコースは、グルカゴンという形で肝臓に無限に貯蓄されます。
マラソンを走る前に炭水化物を大量摂取するのもこのためです。
グルコースは所謂悪玉コレステロールの生産もしますが、
グルコースと肝臓と膵臓、脳が正常に働きかけあって、正常な食習慣を促します。


一方フルクトース。
フルクトースは肝臓でしか代謝されません。
そして代謝のプロセスが身体に深刻なダメージを与えます。
お酒(エタノール)と同じような方法で代謝されるフルクトースは、
慢性のアルコール中毒と同じ症状、たとえばインスリン抵抗性や脂肪肝、高脂血症などがあります。

痛風や高血圧を引き起こす尿酸も、このプロセスで生まれる老廃物です。
メタボリックシンドロームと呼ばれる症状の数々は、このようにして生まれます。
アルコールは脳で代謝されるのでフラフラしたり呂律が回らなくなったりという「酔っぱらった」症状が飲酒後すぐに出ますが、
肝臓でしか代謝できないフルクトースはそのようなことはありません。
フルクトースの怖さは、長期間摂取された時のダメージの大きさです。
酔っぱらわないだけで、アルコールと同じだけの毒性があるということを知らない人は意外にも多いのです。
http://articles.mercola.com/sites/articles/archive/2012/09/09/ethanol-alcohol-and-fructose.aspx

教授は”身体に良い砂糖入り飲料”なんてものはないと言い切ります。
以前食育についてのブログで紹介した英国人シェフJamie Oliverのスピーチ。
「あなたが与えるチョコレートミルクで、あなたの子供はこれだけの砂糖を摂取しています。
これは児童虐待行為です」
と台車一杯の角砂糖をぶちまけるパフォーマンスと共に力強いスピーチをしました。


YouTube: Teach every child about food | Jamie Oliver



先に挙げた「6ヶ月の子供の肥満の問題」は粉ミルクの成分にあります。
講義内で紹介されたある粉ミルクの 43.2%は固形コーンシロップで、10.3%は砂糖が含まれているというのを信じられますか?
これは決して"全ての粉ミルクが悪い"ということではなくて、成分表示をしっかり見て決めることが大切だということを忘れないで下さい。
早い段階から糖類を与えられた子供は、成長してからも糖類を多く求めるようになります。
子供の肥満が問題になっているのも頷けますね。


クッキー1枚食べるために一日中運動できるか?
運動することが良しとされるのは、カロリーを消費するためではないことを知っておかなくてはなりません。

普通の運動で消費されるカロリーなんて微々たるものです。
運動が身体に良いのは、
①インスリン感受性を上げる
②ストレスの発散、コルチゾルの放出を促す
(ストレスレベルが下がることで食欲も抑制できる)
③フルクトースの解毒、肝臓のインスリン感受性の向上させる

ことが出来るからです。

また食物繊維の摂取は満腹感をもたらし、インスリンの反応をゆるやかにします。
腸を綺麗にする作用がある(=排泄を促す)のも有名です。
つまり、加工食品ばっか食ってねーでてめーで作って食えや、てことですね。



我が家の話
わたしの旦那が1型糖尿病を持っています。

1型糖尿病とは自己免疫疾患の一つとされていて、
血糖値のコントロールを司る膵臓が機能していない状態で、
肥満や食べ過ぎが原因とされる2型糖尿病のそれとは根本的に異なります。
2型が運動や食生活で克服出来る可能性があるのに対して
1型には治療法が(今のところ)全く無く、
まさにこれを書いている最中にFDA(アメリカの食品医薬品局)が人工膵臓システムを承認したニュースが飛び込んできたところでした。(それもまた賛否あるのだけれど)


だから食生活、特に糖類の扱いにはとても気を遣います。
パンやパスタをはじめとする粉モノや米も、うちのキッチンには無し。
野菜も、にんじんやじゃがいもといった糖分の高いものは基本的には使わないし、
フルーツも季節のものをたまに食べるくらいです。
加工食品を買うときも、成分表示を確かめてから買います。
(糖類が添加されている食品の多いこと多いこと・・・)
もちろんインスリンを多く投与すれば粉モノでも何でも食べられるけれども、
必要がなければないに越したことはないのです。
そんな食生活に付き合って、今ではわたしもここ数年糖質制限の生活です。
最初の数週間こそしんどかったけれど、慣れてしまえば何てことはないのです。
変な時間の猛烈な眠気だとか倦怠感が無くなって、すっきりしますよ。

我が家では基本的に、パレオダイエットとケトダイエットの間のような食生活です。
「原始時代に食べられない食材は使わない」が大まかなルールのパレオダイエットでは、
必然的に小麦や米など穀物の使用が出来なくなります。
味気ないのでは?と思うかもしれませんが、そんなことはないですよ。
一度レシピを見てみてください。(英語です)
http://paleoleap.com/paleo-diet-recipes/



おわりに
例えば同じ500キロカロリーでも、新鮮な野菜や肉で作られた食事の500キロカロリーと、
スナック菓子を一袋ぺろりと食べてしまった時の500キロカロリーは違います。

それと同じように、良い脂質、悪い脂質、良い糖質、悪い糖質があります。
グルコースは身体に必要な良い糖質ですが、フルクトースは悪い糖質です。
「自分へのご褒美」と称したそのチョコレートやケーキ、スナック菓子やビール。
本当にご褒美ですか?それとも毒でしょうか?
教授のスピーチを聞いてもまだ食べる勇気はありますか?